洗剤を使わなくていいと話題のマグネシウム洗濯。市販されているもののみならず、自作する人もいると聞きます。
でも、マグネシウムが原因で、火事になった工場のニュースなどを目にしたこともあります。危険はないのでしょうか?
ニュースと言えば、マグネシウム洗濯に関して、どこかの会社が消費者庁になにか言われていたような。それに、金属アレルギーになったりしないのでしょうか。
こんな疑問があることも確かです。
ここでは、マグネシウム洗濯の仕組みと危険性についての疑問、そもそもマグネシウム洗濯は汚れが落ちるのかについて考察します。
マグネシウム洗濯の仕組み
マグネシウム洗濯とは、5mm程度のマグネシウムの粒の入ったネットを洗濯槽に投入し、洗濯洗剤を使用せずに洗濯を行うことをいいます。水の中でマグネシウムは水素を発生させ、水を弱アルカリ性にし、皮脂などの酸性の汚れを鹸化(けんか)という仕組みで落とすというものです。鹸化とは、油脂とアルカリを混ぜた時に起こる化学反応のことです。
マグネシウム洗濯のメリット
マグネシウム洗濯のメリットとされているものは、次の通りです。
・化学物質を含まないので環境にやさしい。
・洗濯洗剤を使わないので、安価で洗濯ができる。
・マグネシウムは半年程度使用できるので、購入の手間がかからない。
・除菌効果があり、臭い汚れに強い。
・使用後も掃除や肥料に使え、エコである。
マグネシウム洗濯のデメリット
マグネシウム洗濯のデメリットは次の通りです。
・黄ばみ、泥汚れなどは落ちにくい。
・ネットが縮んだり破けたりすることがあるので、洗濯機の乾燥機能は使えない。乾燥前にマグネシウムを取り出す必要がある。
・マグネシウムから水素ができるまでには時間がかかるため、スピードコースでは効果が落ちる。
・定期的にクエン酸などでお手入れが必要。
・除菌作用がある半面、微生物には毒性が認められる。現在は使用されている量が少ないために問題になるほどではないが、使用量が増えれば環境への負荷もないとは言えない。
マグネシウム洗濯の危険性
マグネシウム洗濯で心配される危険性については、発火および金属アレルギーの出現があげられます。
マグネシウムは水との反応で水素が発生するため、発火するのではないかと危ぶまれるところです。マグネシウムの粒は2㎜以下の大きさの場合、消防法で危険物と位置づけられています。しかし、洗濯に使用するマグネシウムの大きさはおおむね5㎜以上ですので、危険物には該当しません。
他に危険があるとすれば、高温の水による反応で発火するというものです。しかし、これも洗濯に使用するような低温の水であれば、発火の危険性はありません。ちなみにマグネシウムの発火点は浮遊粉塵で520℃とされています。また、空気中の水素の量も通常の洗濯では大量に発生しないと考えられることから、発火については問題なさそうです。
金属アレルギーについては、ごくまれに発症する人がいるようです。もともと金属アレルギーがある方や、小さなお子様のいるご家庭では避けたほうがよいようです。
マグネシウム洗濯は汚れが落ちるのか
汚れ落ち
消費者庁は、2021年4月27日、「洗たくマグちゃん」(マグネシウム洗濯用商品)を販売している株式会社宮本製作所に対し、「洗たくマグちゃん」「ベビーマグちゃん」「ランドリーマグちゃん」の表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたということから、措置命令を行いました。
これは、効果を実際よりも優良なものであるとして広告していたことに対する措置命令です。現在、宮本製作所では商品の表示を改善し、洗剤と併用することを推奨して商品を販売しています。
マグネシウム洗濯の汚れを落とす原理は、水を弱アルカリ性にして、酸性の汚れを落とすというものです。マグネシウムと水の反応にはどうしても時間が必要になってきます。
ネット上で推奨されている時間は洗濯時間を15分以上にすることで汚れ落ちをよくしているようです。
しかし、15分待つのであれば、重曹やセスキ炭酸ソーダなどを投入し、弱アルカリ性にして時間を節約することも可能です。
弱アルカリ性とはpH7.5以上8.5未満のものをさします。水道の水は中性のpH7付近が望ましいのですが、基準値としては5.8から8.6までは水道水として供給することを認められています。住んでいるエリアによっては8.6の弱アルカリ性の水が水道から供給されることもありえます。
マグネシウム洗濯で汚れ落ちを実感するには、15分以上の反応時間と、元々の水道水のPH値が高めであることが必要なようです。
臭い汚れ
マグネシウム洗濯を行っている人の意見として多かったものには、「臭いの改善」というものがありました。洗濯物の臭いの原因の主なものは、モラクセラ菌をはじめとする細菌が繁殖するためです。
調べたところ、マグネシウム自体に除菌効果があるという根拠は残念ながら見受けられませんでした。
しかし、一般細菌の酸性生育限界値は5.0~5.5、アルカリ生育限界値は8~9、最適は6~7ということから、PH6~7を超えれば細菌の増殖が制限され、臭いの発生が抑えられるのかもしれません。
マグネシウム洗濯は洗濯水を弱アルカリ性にして、汚れを落とす洗濯方法ということですので、臭い汚れに対しては一定の効果があるのかもしれません。
株式会社宮本製作所(洗濯マグちゃんの発売元)では、官能試験により過半数の人が、水洗いと比較して洗濯後に臭い残りがないと解答したことを消臭効果の根拠としているようです。(参考:株式会社宮本製作所HP https://www.miyamotoss.co.jp/)
マグネシウム洗濯の欠点
前述したとおり、マグネシウム洗濯では黄ばみや泥汚れについては効果がありません。また、洗濯洗剤にはある、汚れの再付着防止機能(落ちた汚れを再び洗濯物に戻さない機能)もマグネシウム洗濯にはありません。
実際に東京大学非常勤講師の左巻 健男氏はPRESIDENT Onlineで「実質的にはただの水洗い」である、と言い切っています。
(参考 PRESIDENT Online :https://president.jp/articles/-/46443)
そのため、洗濯物の汚れがあまり付着しないお宅には向いているかもしれません。
まとめ
- マグネシウム洗濯は洗濯水を弱アルカリ性にして、皮脂などの酸性の汚れを落とす洗濯方法。
- マグネシウム洗濯にはメリットとデメリットがある。
- マグネシウム洗濯による発火の危険はなし。
- マグネシウム洗濯による金属アレルギーの発症はごくまれに見られる。
- マグネシウム洗濯よりも手軽に、洗濯水を弱アルカリ性にする方法がある。
いかがだったでしょうか。マグネシウム洗濯には危険は少ないものの、汚れ落ちに関しては洗濯洗剤に軍配が上がるようです。洗濯物の汚れが少なく、元々の水道水のPH値が高い地域での洗濯ならば、マグネシウム洗濯でも満足できる可能性があります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。